東京高等裁判所 昭和45年(ネ)1139号 判決
控訴人の右訴の趣旨とするところは被控訴人大学の職員たる医師の作成した処方箋および調剤録をそれぞれ一の行政処分とし、これが無効を主張するにあると解せられるところ、行政処分の無効確認の訴は行政処分が存在しそれに続く処分によつて損害を受けるおそれがある場合その他当該処分の無効確認を求める法律上の利益が存し、当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴によつて目的を達することができない場合に提起することが許されるものであるが、処方箋および調剤録が行政処分に当らないことは明らかであるから、右訴は訴訟の対象を欠き不適法である。仮に控訴人の請求の趣旨が処方箋の作成および調剤録記入の無効確認を求める趣旨であるとしても、右各行為はいずれも公権力の行使たる性質をもつものでないことはもちろん通常の民事訴訟としてもこれらは控訴人の法律上の地位に影響を及ぼす如き法律行為ということはできないから、やはり右訴は訴訟の対象を欠き不適法である。
また控訴人が被控訴人に対し控訴人主張の処方箋および調剤録を除去すべき旨を求める請求について考えるに、右は除去という語義に即するかぎり、かかる積極的行為を司法機関たる裁判所が行政機関たる被控訴人に対し命ずることは三権分立の制度上許されないことが明らかであつて、右請求の当否の判断は裁判所の権限外に属するものであるから、右請求の訴も不適法である。これを取消の意義に解しても処方箋及び調剤録の作成ないし記入が公権力の行使たる行政処分に当らないことはもちろん、控訴人の法律上の地位に影響を及ぼすべき法律行為でないことは前記のとおりであつて、これまた訴の対象を欠くものとして不適法といわざるをえない。
(浅沼 岡本 田畑)